「すべての精神疾患がコントロール下に置かれた近未来」と表題の下に説明が書かれてたSF。
けど、精神のすべてを本当に理解し治療できるとは思えない。
【エクソダス症候群】のあらすじ
時は22世紀ぐらいの近未来。
擬似テラフォーミングのすすむ火星で、移住してくる開拓民が暮らしている。
それはまるで、19世紀後半のアメリカ大陸西武開拓時代を思わせる。
そんな場所でも精神科の病院はある。
地球の大学病院を追われ、生まれ故郷だった火星に帰ってきた主人公は、その病院に着任するなり不穏な状況に落とされた。
精神医療史をふりかえりながら人間ならだれしもが罹る可能性のある病いをめぐり、診療と理想と政治のからみあう事件に巻き込まれていく。
主人公は医療サイドだから「なんとかしたい」気持ちはじゅうぶんにあるが、気持ちだけではなんともできない。
そんな中、火星出身の主人公の過去にからまるいろいろな事件が少しずつ明らかになっていく。
精神医療史に触れるのはこわい
この本の中では、精神医療の過去に触れている。
実際にノンフィクションでその内容について読んだり調べたりすると「なんておぞましいんだ」という感想をいだくことが多い。
多いんだけど、史実は史実。
かかわる人によって表現のしかたは違うけど、その時代・その当時はそれがよい治療法だと思われていたこともある。
正確でもなく誤解も多かったが、医療サイドは「なんとかしよう」と考えていたんだ。
でも、今の時代だって誤解は多い。
この分野は医療サイドだけが努力したって、状況はよくならない。
それはわかってる?
これは地域の人もいっしょに考えて偏見をなくさないと生きづらいってことなのよ。
ノンフィクションで精神医療史を読むのは、怖い。
怖いけど見ないふりをしていると、いつか自分がとつぜん巻き込まれたときに助けてもらえない。
事実は事実としてただしく(そしてフラットに)知っておくことが大事よ。
フラットに、というのは感情的にならず偏見ももたずってこと
さとうがこの本を読んだ理由
エクソダス症候群ってなによ?
メンタルヘルスのカルテに正式に書かれる病名じゃないよね?
だから読んでみようじゃないの、と考えた。
しかもさ、かつて父親が勤務していた、火星で唯一の精神病院が舞台だもの。
いわくありげだよね、と考えちゃうじゃない。
本読み好きで妄想好きのさとうには、他人ごと(小説だからフィクションじゃん)であると同時に自分ごととしても考えさせられる内容だった。
読み終わってから「アレ?」と作家名を確認した。
ヨハネスブルグの天使たち、を書いた作家だ
この作家さんには注目しておこう。
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