自分の頭のなかにある「思い」が、現実のカタチあるものに影響をあたえるとしたら。
それは希望であるとともに、どうにもしようのない恐怖ではないだろうか。
【千年鬼】のあらすじ──やるせない7つの話
「げに恐ろしきは 鬼ではなく この人鬼なり」
このことばを心のどこかに留めておきながら7つの話を読んでほしい。
だってこれは鬼の話ではなく、人の話だから。
三粒の豆
通い奉公の幸介は汚いなりの子ども3人に、もらったばかりの豆を分けあたえる。お礼に3人は幸介の不幸のきっかけを過去見のチカラで見せようといいだすが……
鬼姫さま
小麦団子をもらった3人の子どもがお礼に姫さまに過去世を見せる。恋しい冬嗣が隆国に殺められたと知った姫さまは隆国を側仕えにし、鬼が取りついたような所業にはしるが……
忘れの呪文
針仕事から長屋にもどってきたお針婆は、饅頭の礼に過去世を見せるという3人の子どもに見たい過去を思いだせとせっつかれる。なかなか思い出せずにいるうちに、かわいがっていた長屋の女の子が殺された。殺した相手を知るために過去世を見せてくれと言い出したお針婆だったが、意外なことにそこには……
隻腕の鬼
飢饉の害で苦しむ駒三は、年寄りと子供を山に捨てろといわれていきどおり、鬼神神社にやってくる。過去見の3人の子どもに「鬼神はいねぇ」といわれ千年前の過去世を見にいく。人鬼と化した男をながめていると「駒三のなかにも鬼の芽がある」と子どもに告げられ、考えたすえに駒三はあることを決意する。
小鬼と民
人間には見えるはずのない小鬼の姿が見える民は弟を探していた。いっしょに探していた小鬼はぐうぜん再会した黒鬼に過去見の術を使ってくれとせがむ。そこで見えた過去に民が豹変する。
千年の罪
天界と下界の境目で、黒鬼と小鬼は民がどうなるのかを天女に問う。民があわれで輪廻の輪・命の輪におくり出してしまった小鬼は「千年のあいだ、民の悪行を止める」という罰を選んだ。
最後の鬼の芽
太夫に次いで格の高い天神である姉とともに京の色街ではたらく多美。だが時代は殺し合いの横行する乱世。姉が斬り殺される場面を見た多美はまたたく間に人鬼となる。そんな民を止めようと、小鬼はチカラをふりしぼり……
千年の贖罪は長い
人間は知恵をもち、それゆえに罪という概念をうみだす。
この本では、無垢な心のままに罪を犯すと身のうちに鬼の芽を生じさせるという。
天女の説明によれば、鬼の芽は1000年もとりつくから鬼の芽を宿したものは輪廻転生できない、とのこと。
最初の「三粒の豆」を読むとわかるが、鬼の芽は小さいうちに対処しないと人に禍を成す、らしい。
それを止めるために小鬼が1000年もの長い旅をはじめる。
なにゆえなのかわからないが、1000年は長い。
それが贖罪を目的とするものであれば、さらにツラい。
ネタバレになるのでくわしくは書かないけれど、これは「無知」に罪をつぐなわせる物語のような気がして、せつないよ。
そして思うチカラがつよければつよいほど、あたえる影響も大きい。
「きもちの問題」なんてセリフをかんたんに言っちゃいけない。
さとうがこの本を読んだ理由
さとうはつねづね、妖怪とか鬼とか妖精とかの人外のものは絶滅危惧種のようにこっそりと実在していると思っている。
野生の動物のように人間に知られずにひっそりと生きていると思っている。
たまたまチャンネルが合った人だけが目撃できるとホントに思っている。
そうでなければ世界中に、あんなにたくさん似たようなむかし話が存在しているわけがない。
だからチラッとたしかめたらおもしろそうなファンタジーは逃さない。
でもホラー系にめっちゃ弱いので、実際に目撃したら失神してしまうね
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