暗くて謎の多い第九王家。
よくよく考えたら「よくここまで生きてこられたな」というふたりは、すごく仲が悪い設定だったが。
【ギデオン】のあらすじ
ギデオンが第九王家から脱走しようというタイミングに、第一王家の〈不死の王〉たる皇帝の側近を一万年ぶりに選抜するという召喚が重なった。
召喚には、剣士と王位継承者のペアで応じなければならない。
幼いころからともに暗い第九王家で生きてきた〈聖なる娘〉ハロウハークとの確執を抱えながら、ギデオンは彼女と第一王家の惑星へ向かう。
リクトルという側近選抜のために招かれた各王家からの候補者たちは、古い宮殿の中で謎解きをせまられる。
不仲なギデオンとハロウハークがなんとか謎解きをしようと格闘している最中、ある候補者が死体となって発見された。
そこから謎解きは急激に複雑な展開となっていく。
リクトルという側近に選抜されるということは、いったいどういうことなのか。
ゴシック・ファンタジー風味の推理小説のようだった
本のオビには「ノンストップ・ゴシック・ファンタジー」と紹介されていた。
だからファンタジーのあつかいだが、SFっぽくておもしろい。
ほら〜、SF好きはすぐそういうことを言う〜
ファンタジーというとじっくり話が進むイメージがあった。
けれど主人公たちが打たれ強いので、つぎつぎと事が起こり話はどんどん進む。
主人公たちの故郷での特異な状況を説明し、それを踏み台にしながらメインの舞台でさらに事件が起こる。
翻訳の上手さもある。
主人公たちの会話がわかりやすいのよ。
ひさびさの本読みなのでもたつくかなと考えていたけど、さすがノンストップ・ゴシック・ファンタジーだね、一気に読んでしまったわ。
道具立てはファンタジーなんだけど、推理小説のようなおもしろさがあった。
あたりまえに女性が活躍するのは心地よい
ファンタジーの剣士が女性であたりまえの設定って、心地よい。
体格差や筋力差があって、今までは女性の剣士があたりまえっていう設定にはなかなかならなかった。
ものすごく優秀でものすごくカラダをつくっている女性でないと剣士の立ち位置に居続けられないし、そういう説明が必ずつく。
でもこの話の中では、8人いる剣士のうち3人は女性。
そしてこの舞台に呼ばれているってことは、国でもいちばんの剣士ってことになる。
それでも「ものすごく」優秀とか「ものすごく」カラダをつくっているとかの説明はない。
もちろん、ペアで呼ばれている王位継承者も9人のうち6人が女性。
おお、とてもすばらしい設定だわ
もう役割を性別で決めるなんて古いことは、創作の世界ではしないでほしいよね。
だって現実世界だって、仕事ができる・できないは性差ではなく能力による個人差の状況だもの。
それと、女性剣士に肌が露出して胸が強調される極端な衣装を着せるのも、やめて。
だって男性の剣士に股間を強調するような衣装は着せないでしょ。
出版社は公共性をふまえて、本の表紙イラストにも配慮を見せてほしい。
知性があるなら。
さとうがこの本を読んだ理由
暑い夏、本読みを休んでいたが、Twitterは見ていた。
この本がおもしろくて一気読み、とかのつぶやきがけっこうあって、気になっていた。
そろそろ涼しくなってきてやる気もちょっぴり回復してきたので「よっしゃ。気になってた本を読んでみよう」となった。
タイトルが「ギデオン 第九王家の騎士」
裏表紙を見たら「配下の八王家から召集」という説明がある。
これはファンタジーによくある大きな展開の話だな、と思うと楽しくなっちゃって。
そして大当たり。
ラストに近づくにつれ「一心同体、一蓮托生」の意味がギデオンにはわかる。
ということがさとうにもマジに理解できて感動するわ
どう理解してどう感動するのかは、さすがにネタバレなので書けない。
でもギデオンにとっては一瞬のことで、マジに理解できたことなの。
こんなふうに感動させる書きかたができるのは、うまいなぁ。
なんでもかんでも説明すりゃいいってもんじゃないよね。
でもだいじなことは伝わるように書かれている。
マジにおもしろかったので、ぜひ読んで。
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