前作から数年経ってアルスルは、鍵の騎士団の団長になっていた。
人外討伐組織の代表としてますます戦いに前のめりになっていく。
そのかたわらには、護衛官としていつもルカがつきそっていたが。
【騎士団長アルスルと翼の王】のあらすじ
鍵の騎士団長として現皇帝の誕生日セレモニーに出席したアルスル。
偶然(?)にも皇子とおそろい(!)のような衣装だったアルスルは、ダンスを申し込まれる。
はためにはいかにもお似合いなカップル。
だが、ころびそうになったアルスルをメルティングカラーのルカが支えたことで不興をかったその場で、皇帝は城郭都市アンゲロスの救済を命じた。
城郭都市アンゲロスはバルーンアイランド、気球で浮かんでいる都市だった。
だが長く戦いの中にあるアンゲロスの敵もまた、空を飛ぶ巨大な猛禽類。
アンゲロスはシクリッド社の支社長に空の防衛を委託していた。
支社長スロース・シクリッドはメルティングカラーの期待の星。
ルカは舞いあがってしまうが、ここから話は夢ともつかない神との会話のような、不可思議なながれがはさまる。
アルスルとルカは、果たしてアンゲロスを救済できるのか。
そしてダンスの際にプロポーズされていた皇子との仲はどうなるのか。
ルカの気持ちは?
肝心のアルスルの気持ちは?
恋心をめぐる展開のなかで、六災の王の一体との戦いは少しづつ深みにはまっていく。
成長物語だった
つい読み進めてしまうアルスルの話だが、すこしづつ成長していた。
いつのまにか「鍵の騎士団」をつくり、団長をになう。
自分は他人の気持ちがわかってないことに気づき始める。
生きていくとき、生存を優先する行動に人間はいろいろな要素をくっつけるものだ。
そのいろいろな要素がいわゆる“文化”と呼ばれるものになっていくわけだけど。
人外類似スコアもちだから、そのあたりがあまりわかってない。
もうひとり、滅多に見られない種類の人外類似スコアをもつスロースも、戦いが激化してくる最中、ゆっくりと自我にめざめる。
自分にとって大事なものはなんだったのか。
自分が選ぶべきものはなんだろう?
人外類似スコアもちの人が成長するって、ゆっくりなんだね。
まわりにいる人間たちが注意深く接して教えていかないとなかなか理解できないんだね。
でもこれって、現実の世界でも同じ。
子どもが成長するためには、まわりにいるオトナたちがじゅうぶんに考えて気を配っていかなければならない。
けど、いつの世もどこであっても、それは完璧にはできない。
本人もまわりの人もかみ合わないものが多くて苦労するよ。
じつはふたりとも、成長のきっかけは自覚のない恋心だ。
つねづね世間をみていても、恋の力を原動力にすると人はものすごく「デキる」人にかわる。
アルスルはこれからも変わっていくのだろう。
それはつまり、話が進むにつれていろいろなことがひとつずつ明らかにされていくのだろう。
やっぱり人外の立場にモヤる
いろいろな立場の人外が活躍している今回の話。
人間にだっていろいろな立場の人がいるのだから、あたりまえなんだけど。
使役動物だったり、災厄をもたらす存在だったり。
意思の疎通はできているみたいだけど、そこに上下関係はあるのよね?
力関係は対等なのかな?
こういうことを言うと「現実社会だってはたらかせる動物や害獣や、人間とは離れている野生動物がいるじゃん」って反論されそうだけど。
「現実といっしょで、かかわる人間と人外によって立場や関係性は変わる」って言われそうだけど。
なまじ意思の疎通ができる設定だから、どうしても考えてしまう。
「人間」と「人外」は対等なんだよね?
なんでこんなことが気になるのかというと、さとうがまあまあの年寄りだから。
じつはポケモンが世に出たばかりの時にも「動物を人間の都合のいいようにあつかっているなぁ」と感じたことがあった。
ポケモンが動物とイコールでないことは承知していたけど。
現実では、動物を人間の都合のいいように扱ってはいけないという動物愛護の考えかたが定着している。
言葉では明確には意思の疎通ができていない現実でさえ、動物と対等であるために愛護の精神をもつよう教育される。
言葉で明確に意思の疎通ができる関係で、どちらか一方だけが尽くす関係というのはどうなんだろう?とモヤるんだね。
まあ尽くすだけじゃなくて、やすらぎももらえてはいるみたいだけど。
年寄りは考えかたがカタくていかんよ
さとうがこの本を読んだ理由
レディがっかりシリーズ第1作を読んだときから、個性的な話を書く作家だな、と思っていたので続きが出たら読みます。
でもじつは、なかなか記事にまとめられなくて半年ちかくうなっていた。
おもしろくて気に入って買って読んでいるにもかかわらず、なぜか読後の感想などをまとめようとすると、シュシュっといかない。
きっといろいろな要素がからんでいる話だからなんだろう。
わかりやすく見えているものと根源を支えている考えかたとの間に、いろいろなエピソードが無数の橋のようにかかっていく流れなんだろうな。
さとうにはまだ全貌が見えてないわ
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