人間の性欲にファンタジーの種は尽きまじ。
この分野においては、このことばにすべてが集約されている。
【電脳娼婦】のあらすじ
この本は、中高年男性を性的に興奮させるのが目的らしい。
「この世よりエロティック」
レズビアン小説ばかり書いていた設定の主人公が好色な友に電話をしネタを仕入れようと
するが………オチが「ええっ⁈」って。
「シェヘラザードの首」
首だけになってゴミ集積所に捨てられていたセクサロイドが少年と出あう話。
「たったひとつの冴えたやりかた」
同名の有名作(ジェイムズ・ティプトリー・Jr著)もあるがそちらではない。恋人に去られた女性が、その恋人が教えてくれなかったマゾヒストにとっての究極のプレイをさがす話。
「電脳娼婦」
表題作。女性を人形のようにあつかうがそれは実は………の話。
「少女狩り」
奴隷が奴隷をレイプする救いようのない話。
「黒猫という名の女」
超能力とセックスが絡みあう、少し未来の話。
SFってセックスファンタジーも含むの?
前回、まじめくさって「エロではなく性について」と本(「闇の左手」)を紹介したのに、今回は著者も「オヤジにやさしいエロSF&エロファンタジー」とおっしゃるSF度のあまり高くない作品たち。
エロが苦手なひとは読まない方がよい。
人によっては「これはSFではない」といきどおるかもしれない。
著者はあとがきでみずから「『これはSFではないっ!』と自分で言っておきます」と書いている。
ただ。
つづけて著者はこうも言っている。
「それにしても、なぜ、SFファンは『これはSFではない』という批判をしたがるのでしょう」
「なぜこのように安易に、おのれの主観を客観的事実であるかのように語ってしまうのでしょう」
そこには性愛にかかわる小説を書いてきた著者・森氏の、客観的で本質的な考えがこめられている。
ジャンルにこめられている多様性を、ひとくくりに否定してもしょうがないじゃん、っていう感じなのね。
たとえば官能小説を読んでぜんぜんソノ気にならなかったとしても「ちっともエッチな気分にならなかったじゃん」と思うくらいで「これは官能小説ではない」と断定はしないはず。
でもSF小説は、読んでいて自分の期待にそわなかったりするとなぜか「これはSFじゃないよ」という人が出てくる。
創作の多くはファンタジー(空想・幻想)なので、いろんなものがあっていい。
SFもサイエンスファンタジーだとしたら(おっと、偶然にもセックスファンタジーもSとFだわ)いろいろな形や内容があってもよいのでは?
さとうがこの本を読んだ理由
「電脳」ってことば、いまとなっては懐かしいだけの死語だわね。
そう思いながら「ありがちだよなぁ、娼婦って設定」と考えたことを確認したくて読んだ。
プロの作家さんが書く話は、味つけがちがう。
短編が6つなので読みやすい。
そして「エロ」の要素がはいっているので人によっては苦手、人によってはとっつきやすい。
まあ、SFにもいろいろあるってことで。
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