想像力とか妄想力とか、SFを読むときには必要だ。
でもいろいろな本を読んで知識が豊富にあると、これが何をパロっているとか、現実のどんな問題をイジってるとかがわかって、2倍楽しい。
5つの話が詰め込まれているこの本の、どこをおもしろいと思うかだな。
【流れよわが涙、と孔明は言った】のあらすじ
流れよわが涙、と孔明は言った
孔明には「泣いて馬謖を斬る」の史実がある。この話は馬謖を切ろうとするとまるでパラレルワールドに入りこむような異次元っぷりを忍ばせている。
タイトルも、孔明のかかわる史実とはべつに「流れよわが涙、と警官は言った」のパロディかしらとか考えちゃった。
折り紙食堂
折り紙と千羽鶴と箸袋からなる、3つの話。
読めば読むほど、抽象画を観賞している気分になる。
走れメデス
メデスはアルキメデス、だが。
走れメロスがどこか遠くにチラッとあったなと思いながらの不条理ストーリー。
闇
人は死んだら、電柱になる、かもしれない話。
おもしろいがホラーな風味。
竜とダイヤモンド
竜と鹿人と人間とダイヤモンドと車がおりなす話。
するーっと読み流してしまうくらいサラーっと問題な現実をはさみ込んでいる、イマドキな感じ。
みんな本を書け、そんな時代だ
この本は小説投稿サイトからの、いろいろあっての文庫オリジナル作品集だ。
いまはいい時代だよね。話が書ければWEB上で作品を発表できる。
だからみんな、妄想したら書けばいい。
それを発表するかどうかは自分しだいだし、人気が出るかどうかは話の質しだいだけど、いろいろ読んでみたいなーって人は必ずいる。
そう考えると書くほうも読むほうも楽しい。
さとうがこの本を読んだ理由
- さとうは諸葛孔明が好きなのでタイトルに「孔明」とあったら見過ごせなかった。
- 裏表紙に「ドラゴンカーセックスをテーマに」と書いてあったが、絵的に想像ができなくて興味シンシンだった。
このふたつに尽きる。
パロディを楽しむ、って案外むつかしい。
出来のよさを追求する人もいれば、まあまあうまいところを突いている点を評価する人もいる。
小説として出来がよいと思うかどうかは、読む人の価値観しだい。
この本は小説投稿サイトへ投稿した話をまとめた「童話改変SF6篇の本」=「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集」が第6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞してデビューした著者のオリジナル文庫だ。
さとうはまだ優秀賞をとった本を読んでないが、興味を持ったかたはどうぞ。
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