やはり言語は武器になる

インベーダーの破壊活動が行われるとき、決まって傍受される謎の通信〈バベル-17〉

宇宙的詩人のリドラが一種の宇宙言語であることを突き止めたのだが、さて、次の攻撃を食い止めることができるのか………

サミュエル・R・ディレイニイ(著)
目次

「言語」って「言葉」と違うの?

………ってこういうことを言うと「チョーめんどいじゃん」って思われるけどさ、でもこれがSFなんだよね。

このブログで最初に紹介した本「未踏の時代」で著者でもある福島氏は「幻想文学から哲学までの広いスペースを領域とする、種々の自由なSFというものがあるだけだと思うからです」といっている。

SFに限らないのかもしれないけど、SFはとくに、学問として知っておいた方がいい領域・知っておくべき領域が多岐にわたると思うの。

学問とかいうと、やな感じ、する?

さとう

べつにテストの成績がよくなくても、SF小説は楽しめるよ

で、ついでに哲学っぽいことも考えられる練習をしておくと、楽しめる作品の数というか種類がふえる、という特典がついてくる。

でもね、さとうも本の中身がすべて理解できたかっていうと、そうじゃないのよ。

わからないところはなんとなく雰囲気だけで読み流しながら、好きな部分を楽しんでた。えへ。

タイトルの疑問を手っ取り早くウィキペディアで調べてみると、言語 > 言葉、っていう感じ。

言語っていうのは、人間が音声や文字を用いて思想・感情・意志等々を伝達するために用いる記号体系、という説明だった。

それでね、この「バベル -17」っていう話は、特異で優れた記号体系が何をどのくらいコントロールしちゃうの?っていうところがミソの話なのよ。

「言語」って「思考」とどういう関係だと思う?

思想・感情・意志等々を伝達するのが言語だとして、「等々」のなかに思考もはいるでしょ?

っていうか、「思想・感情・意志」って思考することととなりあわせだよね?

思うに、伝達するのが言語なら「等々」の内容のほうがが先にあるはずじゃない?

話題の本を紹介したときも「この話では『思考は言語に先行する』っていってる」と書いた。

で、も。

「あなたがその言葉を知らなければ、あなたはその概念を知ることはできないのよ」

この本の主人公リドラはぐうぜんにも救ってくれた(んだろうな)ブッチャーにそういう。

それは言葉とともに概念を教えようとしていたときのこと。

そうするとね、言葉というか言語は、概念を理解することをコントロールできることになるわけなのよ。

え?思考が先なんじゃないの?

言葉を知らなくても思考できるんじゃなかったの?

っていうか、言葉も思考も言語というシステムの中にはいっているわけ?

思考って何?

………っていう堂々めぐりにハマっちゃうんだね。

この話は、読めば読むほど、バベル17という宇宙言語を知りたくなる。

でも話題の本のときと同じく、それがどういうものなのか、具体例は書かれてない。

ただ、さとうが堂々めぐりになっちゃう点が、この話をSFにしているポイントになるの。

半世紀も昔のSFだけど、おもしろい点もある

舞台は宇宙的に、侵略戦争に発展しているらしい時代。

機能的な整形手術がありふれていたり、しかるべき手順で自殺した人間はしかるべき手続きで呼び戻すことができたり、死人は霊体化して能力のある幽霊のように活躍できたり、さまざまな設定はあるけど古さはいなめない。

だいたい、大事な報告書を郵便で送ったりしてるしね。

ただ、それをわかって読んでいると、おもしろい発見もある。

たとえば宇宙船のパイロットを雇うとき、その人間がレスリングでどう闘うかを確認してから決めてたのよ。

このパイロットは反射神経がよいのか、とかを確認するわけ。

なぜかといえば、宇宙船ではパイロットの神経組織が操縦装置に直接連結されるから。

そのシステムって、映画「パシフィック・リム」のレンジャーに似てるぜって思ったわ。

こんなふうに、自分の知ってる何かとの共通点を探してみるのもおもしろいのよ。

ちなみにさとうがこの本を買った理由

むかし学生だったころ、聖書の記述でバベルの塔について聞いたことがあったの。授業で習ったのかな。

それが頭に残っていたから「宇宙言語の話」「バベルって単語が使われている」という二つだけでウキウキワクワクになって買った。

読書が好きだからね、ことばをアレコレする話は好きなのよ。

まとめ:本の紹介

同盟軍とインベーダーの戦争が行われている未来。インベーダーの破壊活動が行われるとき、決まって「バベル-17」という謎の通信が傍受される。

言葉の天才にして宇宙的詩人であるリドラは、その謎の通信を解明し宇宙を飛びまわる。

1966年に書かれた話で、スペースオペラっぽいあつかいをされているが、宇宙でアクションする場面はそんなに多くない。

それよりも、〈バベル -17〉という言語の不思議さを想像しながら読んでほしい。

急にワケわかんない文章出てきたー、とか思って読み流すけど、最後にいろいろ説明がつながる。

言語が思考に影響を与える発想って、グローバリズムはびこる今こそ必要だ。

普通にちがう言語をしゃべっているだけで、アワワという展開になるなんて怖いっしょ?

サミュエル・R・ディレイニイ(著)

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この記事を書いた人

昭和生まれ。なのでリアルな顔写真はご勘弁を。
オタクという言葉がなかったころからSFを読んでいます。
オタクのはしくれなので読んだ本を紹介します。

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