見えている現実と自分の記憶が食いちがっていたら、どちらを信じたらいいかな。
それが自分ひとりに起こっていたとしたら、不安だ。
あなたは自分の記憶と運命に自信をもとう。
自分の記憶は自分のミカタだと確信をもとう。
【腐食の惑星】のあらすじ
主人公は未来に希望があふれる17歳の女の子。
彼女は自分だけに見える黒い影や悪夢、幻覚に揺れ動く。
挙げ句の果てには自分の知っている世界が虫食い状態になっていく現実に恐れをなして─────
もくじには「それ以前」と「それ以後」しか書いてない。
「それ」は何であるか。
あなたの記憶のしくみは大丈夫?
カン違いとか、もの忘れとか、記憶についてのあやまりは誰にでも経験がある、と思う。
さとうにはいっぱいあるね
「記憶のしくみ」という本によると記憶には、陳述記憶ということばで説明できる記憶と非陳述記憶ということばでは説明できない記憶とがあるらしい。
一週間前、誕生日にイチゴのたくさんのったケーキを買ってもらって食べたわ
これはことばで説明できるので、陳述記憶。
子どものころ以来乗ってなかった自転車に、社会人になってから必要があって乗ってみたらすぐに乗れた。意外にカラダは覚えているもんだな
こういう現実、これが非陳述記憶。
なんで自転車に乗れたのか?それはカラダが覚えていたとしか言いようがない。
カラダが覚えていたことをことばで説明しろといわれても、「私のカラダよ、どうして自転車の乗りかたを覚えていたのか、教えてくれ?」な〜んて、問いようもない(肉体はことばを発しないから)
さて。
このふたつの記憶のうち、ことばで説明できるほうは意外にできごとを忠実には保存(記憶)できないらしい。
なぜなら、一時的に覚えている内容が長期記憶として安定化するには時間がかかり、その間にいろいろと変化を受けやすいから。
さとうの知りあいにもすごく記憶力のよい人がいる。
本人は「忘れはしないよ。思い出すのに時間がかかることもあるけど、必ず思い出す」というし、たしかに聞けばかならず思い出して答えてくれるんだけども………さとうが思い出せないから、その人のいうことが本当だと受け入れているだけなのかな?
どうなんだろう?
悪夢とひとりぼっちは怖い
もし、世界でたったひとり、ちゃんと正気を保っているつもりなのに、世界が壊れていくような感覚に襲われてたらどう?
瞬間的に自分だけが「幻覚?」とはっきり異常を自覚できる。
なのにほかの誰も異常や変化に気づかない。
自分以外の人々は異常を異常と感じずに日常をつづけている。
………すごく不安で、すごく怖くない?
異常はすこしずつ目に見える変化として広がっていっている。
なのに友人は「このごろおかしいよね、この町」とたいして深刻なことだとも思わず、変化を受け入れているようで………
なにか変だし、なにかおかしい。
その「変」を感じているのが自分ひとりだったら?
ひとり、ひとりぼっちって、怖い。
自分はおかしくないって冷静に自覚できていると、よけいに怖い。
これが夢だったとしても、悪夢にしかならない。
悪夢を見るってわかってたら眠れないよ。
運命って言葉をどう考えようか
主人公は航宙士試験に合格するくらい頭がよくて、使う道具をカスタマイズしたり必要なら道具そのものを設計したりと理系に強い女子。
うらやましい
人間は、一芸に秀でているとピンチのときに自分の身を助ける。
映画でもマンガでも、危機に見まわれたり状況を切り開いて進まなきゃならないとき、秀でた能力(と恵まれた偶然)で主人公はヒーローになるじゃない?
そういうのを見たとき、運命ってあらかじめ決まっているものではないんだというメッセージを伝えてよこすよなと思う。
どんどん変わっていく自分の状況に勇気をもって立ち向かっていけ、そして希望を勝ちとれってはげまされてるような感じがする。
さとうはこの本を読んだら、そういう感じがしたのよ
さとうがこの本を読んだ理由
タイトルよね。
タイトルが興味をひいたわ。
「惑星」が「腐食」するのよ。
どうなるのよ?
どんなふうになっていくのか、読みたくなるでしょ?
1994年に角川ホラー文庫の一冊として刊行された作品。
なのに、いま読んでもふるくない。
むしろホラーというあつかいよりSFというあつかいの方が合っている。
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