これからは、仕事も生きかたも自由に選んでいいのよ。
男尊女卑や古い慣習にコリかたまっている連中なんか、放っておこう。
そんな楽しい、女子の恋バナSFが登場した。
【ツインスター・サイクロン・ランナウェイ】のあらすじ
人類が宇宙へ進出して6000年、弦道移民船団は新しい星系に移住する。
このガス惑星では男女の夫婦が大気中を泳ぐサカナもどきの資源を釣る漁業で収入を得ている。
お見合いでふられてばかりのヒロイン1・テラが謎の家出少女のようなヒロイン2・ダイオードと出会った。
ふたりは異例の女性ペアで漁をし漁獲をあげるのだが、その先には問題が山積みだった。
運命共同体、でいいじゃないかと思う展開
文庫本のオビにはそう書いてあった。
しょっぱなのエピソードからして女性ふたりの運命共同を追う話やんってわかる。
もうなんて言うか、ひかえめで、はっきりしていて、大人っぽいところもあって、ティーンエイジャーみたいで、古くさい因習にとらわれたままの社会に反発していて、読む人の年齢を問わない話なの。
さとうみたいな年寄りでも若いJKでも、ぜったいに受ける部分がある
見え見えのような、まどろっこしいような、恋愛につきものの「ンもう、ちゃっちゃとコクっちゃいなよ」的なところがいろいろあって、でも合間合間にちゃんとSFやっている。
主人公のふたりもちゃんと生活している。
そのSF部分も、軽快でスピード感もあって。
さとうには理屈がうまく理解できないところもあったけどそんなのすっ飛ばして読んでもぜんぜん困らなくて、だけどなるほど〜とか思っちゃうような進み具合で。
楽しいSFだったわ〜。ぜひ、女子に読むことをオススメする。
今まで常識と思われていた古い慣習・考えかたや、男女のペアで家族をつくって家業を継いでいくなんていう固まった考えかたを、新しい現実でどんどんぶち壊していこうって感じなので、爽快になる。
SFも現実をうつす作品
この巨大ガス惑星の上空で巨大な宇宙船団によって形成される「周回者社会」が、どこぞの惑星上の社会と似たような、変な慣習や偏見に満ちているところが、読んでいて「だよね〜」って笑えるポイントなんだな。
なかでも比較的自由な考えかたをする「エンデヴァ」という氏族と、男尊女卑がひどい「ゲンドー」という氏族の、細かいルールのちがいがまるでアメリカと日本の違いにも見えて、ホント笑えた。
あとさ、女性同士のペアで船を操縦するのは認められない規則だといって漁法と船を受け継ぐしくみを盲信する族長が、漁獲審査をするぞとおどすのね。
しかもそのサカナの獲り方は族長の長年の経験にもとづく秘密のやりかたでないと獲れないことを族長自身は知っていて「どっちが優秀か」を競うぞ、ということになる。
こういうの、オトナって言わない。老害だね。
頭がかたくて危機をふせぐ柔軟な考えかたができない老人だよ。
あるいはずるい老人ね。
いやあ、SFといえども理想的な社会ではない。
現実でも悩ましい問題は、遠い未来にもあるんだ。
さとうがこの本を読んだ理由
前に紹介した「アステリズムに花束を」に、書き下ろし短編のカタチで載っていた同名の話を読んでワクワクしていた。
そしたら本屋の平台に、この話が長編になって一冊の文庫本になって登場した。
うっひゃーん、読む読む、読みたい、読むしかないっ!
男の考える社会のしくみって、もっとよく考えれば良くすることができるのに、って腹立たしくなったりバカバカしくなったりする要素もけっこう入っている。
女子がしっかり活躍する話はおもしろいのよっ。
こういうことがあるから本屋めぐりは楽しいし、大事だわ。
この流れって、エンダーのゲームみたい。
でもなにより、これは、恋愛SF小説なのよっ。
だからカバーイラストの、同人受けするような可愛らしさもオッケーなの。
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