性別がなければ生物は生きのびられないのか?
性別というものは、2つとは限らないのか?
未来の宇宙で生きているさまざまな生物について、妄想するとおもしろい。
【宇宙生命図鑑】のあらすじ
すでに栄華をきわめた文明はなくなり、女性しか生まれなくなった星・ジパス。
博物館に採用されて赴任した主人公は、スペースバスの中でおかしな2人組と知りあう。
後日、そのふたりに誘われて遺跡を見に行ってみると、これがどうもただの見学にはおさまらない事件になってしまった………
女性しか生まれないというテーマの本質部分に触れるのは、話の後半部分。
原住民に疑われた3人は、なぜか銃を撃ちあい逃げまわるという状況のなか驚くようなモノを目撃してしまう。
それが「宇宙生命図鑑」とどう関係があるのか。
女性だけしか生まれない惑星、とは
SFにはどんな設定も作ることができる。
女性しか生まれない惑星ジパス、というだけでなにか新しい生命のしくみが書かれているのでは?と読むまえから期待した。
ジパスは地球系人からみれば歴史のあさい植民星だが、原住民からみれば文明が衰退していく星だという。
原住民が、外からやってきた地球系人に好意的でない状況はありがちだ。
それでも、学者のおかげで女性だけの人種が生きていることが知られている。
生まれたときから役割のちがう2種類の女性の社会。
集団を統治し、生活をささえ、ときに戦士となり、子どもを産むクバシム。
ほっそりとかよわく、何も仕事らしいことができない手のかかるヒリ。
これって2種類の女性のあいだにモメごととか不満とか、出るよね?
繁殖は、単為生殖という言葉だけでかたづけられる。
何がどうなって、という理論的説明はない。
そこがちょっとものたりない。
だって、その程度のことなら「女性しか生まれない」をネタに話にするには足りない。
そして植民星の話だから、女性だけしか生まれない事実とは関係なく、不動産屋なんかがやってきてモメごとを持ちこむ。
やだねぇ。地球系人はなんでも自分たちに合わせようとするし
この話は惑星がどうとかいうよりも、人間が生物としてからむ話なのね。
その証拠に、話を進める役割をせおっているおかしな2人組が主人公といっしょに出てくる。
星としての生態系の話でないことはたしかだわ。
SFにもよくある「尻切れトンボ」
主人公といっしょに出てくるおかしな2人組、っていうのが、この話の土台につながるアレコレを知っているようなのだが………
実はこの2人組こそがほんとうの主人公たちではないのか、と思うのよ。
読み進めていくと、この話はシリーズ化が著者のアタマのなかにあったのでは?と思わせる感じだ。
だから次回作で少しずつ「宇宙生命図鑑」の存在について説明を加えるつもり、だったのではないかと思う書きかたがされている。
そしてたぶん、その時に2人組についてももう少しくわしいことが書かれるはずじゃなかったのかな?
だって本のタイトルが「宇宙生命図鑑」なのに、図鑑らしい話がほんのすこししかないのよ。
しかもおかしな2人組はマイペースで動いている。
自分たちだけが知っている理屈があるかのように。
自分たちだけが知っている理屈はあったのさ、きっと
最後の最後には、次回作をにおわせるような表現まで残している。
でも、これに続く本はない、話もない。
こういうことって、SF界隈ではときどき見かけることなんだ。
売上至上主義、でもないだろうけど、売れなきゃ次が出してもらえない。
このブログで取り上げた本でも
などは、まだ続きが出版されていない。あるいは日本語に翻訳されてない。
こういう本ってたくさんあるんだよ。
原語で読めないさとうはツラい。
そして書いてもらえない続きを待つ身はツラい。
どんな宇宙人を考えていたのか、どんな話にするつもりだったのか、読んでみたかったなぁ。
これじゃまるで、完結しない同人小説みたいだよ
さとうがこの本を読んだ理由
この本は「2002年度 第2回Sense of Gender賞 大賞」を受賞している。
やっとこさ手に入れて、読んだ。
本の紹介に「女性だけしか生まれなくなった種族」と書かれてあったから、ぜったい読みたいと思う。
主人公もいってるが、どこかにオス(男性)のいた過去の痕跡を、つい探してしまうからね。
そしてそれは、やっぱりどこかにはどんな形でかはあるわけで。
最後にサスペンスな盛り上がりかたをして、話はオチがつく。
生殖技術が発達してきた令和のいまなら、どんなオチがつくんだろう?
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