古い本にも「今」と似ているものがある。
さとうが読んでた文庫は1991年発行の12刷版だったけど、実際に書かれたのはもっと前。
確かに話の細かいところは古くさいな。
学習を経て思考は進化するのかな?………7篇の短編です
接触汚染
36光年もの距離を宇宙旅行してきて、植民のためにやっとたどり着いた惑星にはすでに定住者がいた。しかし、新しい惑星に降り立つ前に、安全を確認する検疫を行わなければならない。万全の対策を施して母船に定住者を招き入れたはずだったが、汚染は発覚し、その結果は………アイデンティティっていろいろな要素で成り立つんだなと納得する。
大いなる祖先
進化って何?知性とか感情とか、じっくり思考する能力も進化するのかな?進化したら思考する内容も変わるのかな?そうとは思えなくなる話だった。
過去へ来た男
1000年も前の時代に突然タイムスリップした、若い軍人の存在をめぐる話。便利が当たり前の世界で暮らしていると、本当は便利な道具がないと何にもできないことに気づかないよね。
祈り
男が、身分を偽ってビュキャナン姓の男の子を探す。それに気づいた弁護士が、捜索に手をかす。でも男の子は見つからないし、手がかりさえも消えていく。淡々とした古びたオチのSFだが、よくよく頭の中で妄想するとホラーだよ。
操作規則
PSI(超能力者)を日本語で‘プサイ’と表記している点で、結構な誤解だろうけど、そこは造語として我慢してくれ。宇宙船の燃料節減のために乗組員として合流した念動能力を持つ男の扱いについて、元からの乗組員と船長がどう対応するかの話。
冷たい方程式
密航者に対してパイロットが取るべき行動は船外遺棄しかないが、それがたった一人の兄に会いたくて密航した美しい娘だったら?ってな話。
信念
誰も信じてくれない奇妙な現象を、認めさせるにはどうすればいいんだ?そのことについて、自分の信念を通すために行動する教授の話。
古いけど、今もある
話の中の細かい表現は、古い時代の表現だなと思う。展開も、まあ昭和な感じだなと思う。
でも「接触汚染」のアイデンティティが何に由来するかとか、「大いなる祖先」の上下関係につきまとう感情とか、「過去へ来た男」の軍人の傲慢さとか、「祈り」のオチのつけ方とか、「操作規則」の人の扱い方とか、「信念」の理解できないものへの他人の態度とか、話の根幹は今と大して変わらない。
人間の中にある知性や感情は、レヴェルが多少違ってきたかもしれないけど、要素としては同じものがあるんだね。
表現が古くさい分、さとうにはのんびり読めた
ちなみにさとうがこの本を買った理由
「冷たい方程式」を読みたくて買った。当時、この本しかなかったから。
読んだら、「祈り」なんかトワイライトゾーンってアメリカのドラマのような感じがあって、おおっと思ったよ。
まとめ:本の紹介
すでに新版が出ているので、読みたい方は古本を売ってる店で探すことになる。興味を持った方はどうぞ。
なお、「冷たい方程式」と「信念」は新版にも収録されている。
新刊はこちら。
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