【エラスムスの迷宮】ホットスポットには注意すべし

いまは検索するとホットスポットはwi-fiのことばかり。

でもこの話のホットスポットは本来的に気をつけないといけない場所や兆候について語ってる。

えっ、なにに気をつけるの?

目次

【エラスムスの迷宮】のあらすじ

同盟関係にあっても価値観や政治体制がちがえば求めるものもちがってくる。

人類居住星域パクス・ソラリスの周辺部に位置するエラスムス星系が、戦争勃発の危険が高いホットスポットに認定された。

守護隊を退役していた主人公は盟友の死の真相を明らかにし、戦争の危機を回避するために権謀術数ウズ巻く迷宮へ向かうことになるのだが………。

戦争勃発を止めようとする守護隊、それに翻弄される保安隊、それらすべてを利用するブラッドファミリー、そういう権謀術数の迷宮のなかをぐるぐると歩き回るような話だ。

だからホットスポットには気をつけないと

さとう

ホットスポットって本来は、局地的になんらかの値が高かったり、局地的に(なんらかの活動が)活発であったりする地点・場所・地域のことをさすための用語なんだよ

この話では、戦争が起きそうななんらかの条件がエラスムス星系そろいつつあるぞ、といっている。

エラスムス星系が、だからホットスポットになってるぞ、っていうこと。

戦争になるかもしれないくらい危ういバランス、っていったらもう、四方八方気をつけなきゃいけないことだらけ。

そんなところで仕事せにゃあかんって、ツラい。

だから不老不死に手を伸ばすのかな?

不老不死は見果てぬ夢か、既得権益か

それにしても未来の人類はいろんな方法で「不死」を手に入れるよな。

戦争を起こすんじゃないかと思われている側も、起こしたら対抗するぞと思わせている側も、それぞれの方法で「不死」を手に入れられる。

そしてストーリー上、方法はともかく、不死を手に入れられる立場とそれの運用について、なんだかんだいっても結局はある種の階級の者たちだけなんだ。

それはもう、既得権益といってもいいわけで。

………ズルくない?

といって、みんなが不死になっちゃったら、以前紹介したこの本のようなことにもなりかねないわけで。

それは「ユートピアにも不公平な死がある」という記事の「奪命者」という本です

大昔からみんなが夢見る不老不死は、遥かなSFの未来に行ってもみんなが夢見ているのかな?

立場の違う人間の欲望は絡まる

どんな人間も立場や将来について、夢や希望、最低限でも欲望をいだく。それがなくては生きていけないから。

結局、戦争ってのはそういうものの絡まりによって不意に起こってしまう。

この話も、まずはそれぞれの人物の立場から世界を見ている。

戦争がおこるかもしれないホットスポットに集まりつつ、まだ直接には関わりなくそれぞれがするべきことに向かって進んでいく。

でもすでに、そのすべてがひとりの権力者の入念な計画のもとに粛々と準備され実行されていることだったとしたら。

長く広く深く、計画され動かされていることだったとしたら。

さとう

怖いことだけど、フィクションってそういう筋立てがけっこうあるよね

現実には、ひとりの考えですべてが動くことは驚くほどすくない。

だってやっぱり、みんなが自分の欲望を持っているから。それらがすべて一致するなんてことはないから。

矛盾してるようだけど、この話でも、欲望が一致している人物はいない。
おなじ目標に向かってはいるけれど、それぞれが心に秘めた動機はちがっている。

だからさー、おもしろいんだけどめんどくさいのよ。

ミステリーのように、誰がなにを言ってどう動くの?って考えながら読まなくちゃならない。ミステリーほど入り組んではいないけど。

でも複数の人物たちがそれぞれの視点で語る話のすすめかたなので、心情がよくわかって、めんどくさいけど読みやすい。

さとう

だからさー、オススメなのよー

さとうがこの本を読んだ理由

それはね、裏表紙に書いてあった説明を読んだから。

一応、2010年にフィリップ・K・ディック賞を獲った本なんだけど、そういうのは目に入らなかった。

裏の説明に「負債奴隷制を基盤とする」とか書いてあって、うひょっと思ったのね。そのことがどんだけこの話に関わってくるのよさ?と興味をひかれたの。

さとうにはこういうことがよくある。

本の紹介やもくじを見たときに「あっ、この言葉はなにをあらわしてるの?」とか「この言葉にかもし出されるなにかが私を引っ張るわー」とか、そんな雰囲気で本を選んじゃう。

さとう

でもまあ、読んで損したことはないんで、いいかな

文庫本なのに分厚くてびっくりすると思うけど、読み始めたら手から離したくなくなるくらいおもしろいから。

めんどくさいところもあるけど。

なお、この本には38章もあるのにもくじがない。ま、そんなことは気にならないストーリーだけど。

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この記事を書いた人

昭和生まれ。なのでリアルな顔写真はご勘弁を。
オタクという言葉がなかったころからSFを読んでいます。
オタクのはしくれなので読んだ本を紹介します。

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