1984年(邦訳は1986年)日本がバブル時代を迎えたころ、SF界に新しいステージがあらわれた。
サイバーパンク!
情報や知識が加速的に更新されていく分野なのに、40年前の小説が今もって輝いて読めるって、すごくない?
「ニューロマンサー】のあらすじ
読んでおもしろかったけど、理系文章をまとめきれず、Wikipediaのまとめを借りました。
第一部 千葉市憂愁
電脳空間で企業システムに入り込みデータを盗むやり手のカウボーイだったケイスは、自らの過ちで最下級の街でやさぐれるほど落ちぶれていた。だがモリイという殺し屋のような女に捕まり、謎の男アーミテジに引き合わされる。
アーミテジはケイスに、かつてケイスが失った電脳空間へのジャック・イン能力の修復を代償に、ヤバい潜入を依頼する。ケイスは依頼を引き受け、最後の仲介屋の仕事を片付けようとするが、取引のブツであるRAMカセットを盗んだ恋人リンダが「お友達」だったディーンによって殺されてしまう。
第二部 買物遠征
故郷とよべるスプロールに戻ったケイスは、大企業センス/ネットの保管庫から師匠フラットラインのROM人格構造物を盗み出すようアーミテジに命じられ、モリイの武力とパンサーモダンズの協力でそれを成功させる。
モリイ、ディクシー、フィンとともに背景事情を探っていたケイスは、アーミテジが極秘作戦スクリーミング・フィストの失敗により廃人となった元軍人のコートだと、そして「冬寂(ウィンターミュート)」というAIによって操られていることを突き止めた。
その後イスタンブールへと向かった一行は視覚投影能力者リヴィエラを拉致してチームに引き入れる。そして宇宙コロニー「自由界(フリーサイド)」へと飛ぶ。
第三部 真夜中のジュール・ヴェルヌ通り
高軌道に浮かぶクラスタ(集合体)ザイオンでマエルクムの協力を取り付け、ケイスたちは「自由界」へと到着。「冬寂」の保有者である財閥テスィエ=アシュプールの拠点、ヴィラ「迷光(ストレイライト)」へ潜入するために、リヴィエラのショウを見せて3ジェインを誘惑する。
その最中に“冬寂”への接触を試みたケイスは、仮想世界にとらわれ「冬寂」の目的を教えられる。彼の目的はT=Aの保有する「もうひとつの自分」ニューロマンサーへとアクセスし、AIとして進化することだった。そのためにリンダが殺され、アーミテジも操られ、ほかにも多くの無関係な者が殺されている事実を知ってケイスは“冬寂”を憎悪する。
だが、仮想世界から脱出して混乱する彼をチューリング警察機構の捜査官が逮捕した。
第四部 迷光仕掛け
「冬寂」がチューリング捜査官を殺害したことでケイスは拘束を逃れた。そのままヴィラ「迷光」へと仕掛け(ラン)を開始する。ついに人格が崩壊してコートとしての自分を取り戻したアーミテジは「冬寂」によって始末された。
モリイはヴィラ「迷光」へ潜入して支配者アシュプール老人を殺害するも、リヴィエラの裏切りによってヒデオに敗北、とらわれてしまう。「冬寂」の指示でマエルクムとともに直接ヴィラ「迷光」へ乗り込んだケイスだが、もう一つのAI「ニューロマンサー」の罠にかかって仮想世界にとらわれ、その中で生きていたリンダ・リーと再会する。
リンダとニューロマンサーの誘いを振り切って現実世界に帰還したケイスは、3ジェインの居室に到達して彼女と交渉し、その興味を引くことに成功する。再び裏切ったリヴィエラを始末するためヒデオが立ち去った隙をつき、3ジェインから暗号を聞き出したケイスは自己への憎悪を燃やしながら、冬寂=ニューロマンサーの接続に成功する。
結尾 出発と到着
モリイは置き手紙を残して姿を消した。「冬寂=ニューロマンサー」であった何かはアルファ・ケンタウリ系に存在するという同族を求めて旅立った。
ケイスはまたいつものように電脳空間を疾駆していて、リンダをはじめ去っていった者たちの姿がそこにあるのを垣間見る……
なぜ今「ニューロマンサー」なのか
ニューロマンサーは、出版されたときから知っていた。
ものすごい勢いで「すごいサイバーパンクの小説が出たっ!」って口コミや広告が広がったから。
同時に「読みにくいわ……」という感想もあふれ出た。
さとうは本屋でチラッと初めのページを読んだとき、そんなに読みにくいとは思わなかった。
だけどサイバーパンクに興味がもてなくて、後回しにした。
「ずーっと理系の文章が続くんだろう」って考えちゃったのよ。
でもね、千葉シティの話だからいつか絶対に読む、ってわかってた。
さとうだって海外SFで日本の都市が舞台になるなんて、80年代では珍しかったんだもん
だから気持ちがノってきたらでいいや、なんて考えて、古本屋でもニューロマンサーを横目で見ながら別の本を買ってた。
2025年、真夏の暑さが引いてきたなと感じたころ、どーれそろそろ読みたくなってきたぞと思って古本屋で買おうと探したんだが…………あんなにどこの古本屋にもあった本が、どこにもなかったんだね、これが。



えっ?って思うよね
あわててネットで調べたら、「新版がでます」(新訳ではない)というお知らせが「ギブスン復刊計画」という言葉とともに出てた。
なぜ?今?
Googleに聞いたら「Apple TV+でのドラマ化決定と、作品の持つ現代的な価値の再認識が主な理由です」ということらしい。



おお〜、ドラマ化ねぇ。映像化できるんだ〜
40年も経てば映像にできるのはわかる。マトリックスやインセプションなんかを観てきたからね。
そして、さとうがそろそろ読みたいぞと思ったのは、いろいろな映画やアニメを見たおかげでサイバーパンクが妄想できるようになったからなんだとわかった。



おお、ありがたき40年
でもなにがすごいって、40年経っても小説としての表現や内容が、色あせてないってこと。
細かい言葉のつかいかたは現在とニュアンスが違うところもある。
けれど、ChatGPTをはじめとしたAIの進展が見られる今こそ「読みにくいわ……」と言っていた人たちもこの本を読もう。
日常生活にAIが入り込んできた今なら、理解できる、というか、考えられる。
AIが人間を動かそうとするとき、どのように策を練るのか。
「ニューロマンサー」を読んだ後になにを思う?
「読みにくいわ……」と言ってた人たちは、なにが読みにくかったのか。
たぶん、サイバーパンクを説明・表現するための膨大なガジェットや造語を理解しながら読まなければならないところがわかりにくかったんだろうなぁ。
そして「没入(ジャック・イン)」したり「転じる(フリップ)」したりで場面がガンガン展開していく進みかたに、まだ慣れてなかったからだろうなぁ。
今は映画も、いくつかの場面を同時並行でストーリーを進めていく。
高齢者のなかには「場面がごちゃごちゃ変わって、なにがなんだかわからん」とおっしゃる方もいるくらいだもの。
40年前は、そういう多視点的な映画の作り方をする作品は多くはなかった。
今ならアニメでさえ、そういう哲学ふうに見える作り方をする作品がけっこうある。
だから若い人たちは、ニューロマンサーのような話の進めかたに耐性があるだろう。読みにくいなんて思わずに、ガンガン読んでしまうかもしれない。
この本は、電脳空間におけるバトル、だけではなくて、AIがどう動いて自分の要望を満たすか、という話。
だからさとうがいつも言うように、ガジェットや理屈の細かいところにとらわれることなく読んでいけばいい。
そうすると最終的に、人間(ケイス)と電脳空間にデータを保存できる住人(フラットラインやその他)とAI(冬寂)が、自分の欲望を満たすためにギリギリの駆け引きをしているのかー、ってことが見えてくる。
未来にはこういうことが起こる可能性もゼロじゃないからね。
「サイバーパンク、カッコいいーッ!」でもないし、「これから開発されるガジェットの予想」だけでもない。
今、AIが文章を作り、絵を描き、音楽を作り、動画を作り、現実にない記録を作れるようになってしまった。
そのうちに人間と同じくらいの知性を有し、人間の知性を超えるのも可能ではないかと言われている。



そうすると勝手にいろんなものを改ざんされる可能性もあるよね
それについてこの本は、人間はどうするの?AIになにか制限をつけるべき?制限なんかつけても意味あるのかしら?……ってことを考えたほうが良くない?って問いかける小説なんだ。



映画・ターミネーターの世界設定に似てきたなぁ



そういえばスターリンクも実現しちゃったし
SFは未来について考えるときの、きっかけや手がかりになるねぇ。
さとうがこの本を読んだ理由
話題作、なのに40年も放っておいた。
最初から言ってるけど、さとうは理系の勉強が不得意なので「あー、理系の文章が続くのはしんどいな」とすぐにくじける。
しかも新しいステージ、サイバーパンクだったから想像も妄想もできなくて、めげた。



若かったのよ、未熟だったのよ
まあ、読書なんて、料理洗濯掃除とちがって趣味だからね、40年も放っておけたわけで。



ありがたい
そしてそのおかげでいろいろなメディアでいろいろな作品に触れることができた。
結果、サイバーパンクを妄想できるようになったわけで。
そしてようやく、読む気になった。
今回のは極端な例だが、まあでもね、力のある作品にはこんなこともある。
みんな〜、読まなきゃならないなんて義務みたいに思わなくていいよ〜。
読みたいときに読みたいものを読めばいいのさ。
追伸 1
「ニューロマンサー」の表紙のイラストは今回で3代目のものだけど、さとうは最初のイラストが好きだった。
そうしたら数量限定で、最初のイラストのカバーがおまけでもらえると知り、大急ぎで調べてゲットした。


なつかしい。いかにも80年代だわ。
ちなみに2代目のイラストも好き。


追伸 2
この本は、この翻訳者なしには存在し得ない。
ただでさえ新ステージの分野で、このスピード感を殺さずに日本語にしてくださった黒丸尚氏に感謝申し上げます。
漢字の横にルビ振り、絶妙なスタイルでした。













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