カリスマだった父親についていったら天国のような世界へ行けると思っていた少年。
さまざまに改変された未来世界で哲学し冒険し悩み傷つきながら、けっきょくは父親とは違うものをめざす─────というとかんたんすぎかな?
でも、自分にとってのしあわせは、自分で考えないとつかめないってことを教えてくれる。
【幻惑の極微機械】のあらすじ
はるかな未来、カリスマ指導者ジュピターにしたがって陥穽星をめざした一団は、最初の段階でつまずいた。
絹人社会は年齢が100歳を超えると「真人間」と呼ばれ選挙権などを有する階級社会。
ジュピターの息子であるロトは年齢的に「若輩者」であるため、人工都市・絹市当局の監視下におかれる。
行方がわからないジュピターを慕う若輩者の信仰がロトを介してひとつの熱気として集団行動を起こそうとしていた。
市当局につかまるまえにロトたちは、疫病が残っているとウワサされていた陥穽星へ決死の脱出を試みる。
だがあらゆることが混沌とした陥穽星で現実と情報を体験したロトは、次の段階へと行動を起こした……
多様性ってなんだろう?
多様性って聞くと、何を想像する?
なんでもいろいろあり、種類がたくさん存在する、な気がしない?
検索するとウィキペディアが出てきて、単純になんでもありならいいってわけじゃないらしいことがわかる。
多様性(たようせい)とは、幅広く性質の異なる群が存在すること。 性質に類似性のある群が形成される点が特徴で、単純に「いろいろある」こととは異なる。
(ウィキペディアより引用)

なんでこんなことを聞いたのか、というと……
この本を読んでいくとき、あれこれめんどくさい事情を考えながら、いつも頭の片隅に(多様性が………)とかかげてないといけないから。
主人公のロトは自分がどこに属しているのか自分でもはっきりわかってないまま、話が進む。
自分が何かにとらわれていると感じつつ、でも何にとらわれているのかはっきりわからない。
この本における多様性は、
1. 主人公ロトが幼いときの生きてきた宇宙船の中の世界
2. 主人公ロトが10年間生かされてきた人工都市の世界
3. 主人公が生きていけるかもと思って行ってみた惑星の世界
4. 最終的に主人公が行き着いた世界
の4つに含まれる
A.人間の立場
B.宇宙的な広がりを持つ居住可能地域をどう捉えているか
C.測れないほど長い時間の経過をどう考えているか
D.世界を改変しているメイカーの存在
にそれぞれ影響を受けているのね。



何を言ってるのか、自分でもよくわからなくなってきた


読んでいると「なんとなくこの人たちはこんな集団か?」的なモヤモヤがいくつかあることだけは感じとれる。
色味の違ういくつかのそういう集団的なものが、なれあいながら、あるいはあからさまにぶつかりあう。
まるでウィルスのように
じゃあ、多様性ってどうやってできてくるんだろう?
この本のタイトルにあるナノマシンについては、前作【極微機械ボーア・メイカー 】で紹介したとおり、分子科学的な自動機械、ウィルスの機械版だと思ってね。
そのナノマシンが(著者流にいうならメイカーが)いろんな状況を作りだして混沌とし、人間はそれに振りまわされる、ということなの。
現実の自然界だって、ウィルスで疫病や突然変異があらわれて広がって、大騒ぎしながらいろんな生き方が生まれてしまう。
必須なものなのか妥協の産物か、シェアすべきものなのか戦略なのか、いろんなパターンが存在するけど、主人公のロトはこう言ってる。
「しかしたぶん、本当の理由などないのだ。生き残るべき者が生き残る。気まぐれな偶然と緊急の必要性という二重のフィルターをすり抜けるのにどんな特質が最適か、だれにもわかるはずはない。」
多様性は意図してつくれるものではない。



進化はデータの交換だけではつくり得ないんだね
おそらく「メイカー」なるマシンを使っても、あらわれる結果にはコミットできない部分もある。
さとうがこの本を読んだ理由
だって、極微機械ボーア・メイカーを読んだもの。その続きがあるってなったら読むでしょ。



わりとマジメなのよ
どこかでは前作とつながっているはずの、でもまったく遠い未来の話は、メイカーの存在があたりまえすぎる世界での主人公・ロトの人生の話。
もはやメイカーは主役ではない。
それはあたりまえのインフラ。
むしろメイカーが作り出す多様性の世界の話だった。
第1部、第2部、第3部、エピローグという成り立ちで、上下巻2冊になっている。
だからけっこう長い。



そして8年ぶりに読みなおしたら、ストーリーがすごくよくわかったわ
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